葬儀と告別式は違います

 

ことばを大切にすること ―お通夜を考えるー

 

仏式のお葬式は、通夜と葬儀・告別式と2日間実施するのが通例です。普通通りのお葬式と言われれば、2日葬が一般的で、コロナやご家族のみの葬儀が多くなったとはいえ、2日葬を当然のように感じるのは伝統のなせる業(わざ)であると感じます。
よく葬儀社の中で、通夜「式」とか、翌日の葬儀を「告別式」と記載しているところもありますが、これは大いに間違いです。通夜は厳密には「式」ではなく、「告別式」は葬儀と明確に違います。
単なる表記上の問題だろとか、細かいことにこだわるな、とか言われそうですが、私は葬儀の経営者として、また仏教の僧侶として、言葉はとても重要と思っています。それは自分で調べた限りにおいての知識で、それ以外になにかあれば、きちんと撤回致しますが、現段階では通夜は式ではなく、葬儀と告別式は明確に違うということを申し上げたい。
まず通夜ですが、これは古代の死者への葬送儀礼、殯(もがり)からきています。殯とは、古代の死者への葬送儀礼の一つで、昔は医療技術が未発達であったため、亡くなったかどうかを知る術がありませんでした。そのため動かなくなった人を集落とは別の場所に移動させ、そこから出てくれば生きている、そこにずっと留まっていれば死者、という具合に「動くか動かないか」で生死を判断していた頃の儀礼です。殯は集落の人間が夜を通して集まっていたとも伝えられており、今日の通夜の原型がこれにあたります。
通夜は、端的に言えば亡くなってみんなが集まり、死を確認するためのもの。日本仏教の葬儀に照らし合わせてみると、枕経がそれにあたり、臨終間際に死者への儀式をしたのが正式でしょう。
やがて時代が移り変わり、枕経も形式だけになり、通夜になったというのが流れではないでしょうか。
いずれにしろ、通夜にああしろ、こうしろ、といった伝統的な作法はありません。通夜を式と捉えるとなると、死者供養の臨終行儀があってしかるべきだと思いますが、高野山真言宗の壇用経典(葬儀の次第)には通夜の次第はありません。けれども法話をすることがとても重要と習いました。
家族が集い、仲間が集まり、法話をするとは、まさしく、グリーフケアにふさわしいのがこの通夜なのかなと感じます。儀式としてではなく、遺族のこころのために通夜が発展してきたと考えると、何とも意義深いものがあります。

 

いろいろと考慮しますといかになるのかなと思います。

@通夜は、夜を徹して家族や近しい人が集い故人を悼む
A通夜は、儀式として定義されるのではなくあくまでもグリーフケアとして執行する
B通夜は、法話を行い遺族の心のケアを中心に考える

 

以上、考えてみたときに、仏式の葬儀を「通夜式」と記載している葬儀社は通夜に式があると思っているかわかりませんが、儀式を尊ぶプロとしてはいかがなものかと考えざるをえません。
こういう細かな言葉を蔑ろにすると、儀式本来の意味が薄まり、最終的には式に対しての尊崇を失くしてしまいかねません。

 

今のお葬式は2部構成です

 

葬儀・告別式も同じです。葬儀と告別式は明確に違います。
仏式の葬儀で考えるならば、葬儀は僧侶が引導を渡し、戒名(法名・法号)を授与し浄土に旅立つ(往生)を手伝う儀式。告別式はお別れがメインの式であり、故人と遺族や参列者が最後の別れをする式。
葬儀は主に僧侶が読経などをあげ、執行するのに対し、告別式は、主に葬儀社が取り仕切り、別れを演出します(僧侶がいないわけではありません)。
また役割という意味からもこれは違います。
葬儀は宗教者が携わり各宗派の儀式(法式)に則って実施します。別れという意味においては、宗教を基盤にした離別(わかれ)と考えていいでしょう。翻って告別式は、故人との最後の時間であり、遺族含め参列者が立ち会い、別れをするため、社会上の離別と考えて問題ない。つまり、葬儀は宗教上の離別。告別式は社会上の離別と言えます。
よく著名人などが密葬(家族のみで実施する葬儀)をした後に、本葬(公にした葬儀)を実施しますが、この本葬のことを「お別れの会」とか「告別式」と呼称します。
つまり僧侶がいるのに「告別式」と書いていたり、僧侶が一切立ち会わないのに「葬儀」とか書かれていたりすると、大きく首をひねってしまいます。
余談ですが、最近多くなってきた僧侶を伴わない「火葬式」という言葉は非常に問題があると感じています。僧侶がおらずの式ですから、正式には「火葬場でのお別れ会」、もしくは「火葬場での告別式」というのが正しいでしょう。
以上のように、葬儀と告別式は名称や意味あい、役割も違うため、同じではありません。両者ともに大切な弔いの式であるとことは間違いないですが、正式には「葬儀、並びに、告別式」と呼ぶのが正しい
そしてこれが葬儀の2部構成につながるのです。葬儀・告別式の1部は「葬儀の部」で僧侶が儀式を行う時間。そして2部は「告別式の部」で葬儀社が主に行い(くどいようですが、僧侶もいます)お別れを実施します。
葬送儀礼というものは実によくできておりまして、こういった宗教上の離別と、社会上の離別を短時間で一緒にやることは先人の方々の叡智ではないかと思います。これはキリスト教式も神道も同じです。日本人だけではないところが、人類の智慧を感じます。

 

 

お寺葬の意義

私たちは日本でただひとつの、お寺と葬儀社が共にひとりの命を弔う「お寺葬」の専門葬儀社です。
儀式の執行者としての僧侶。
食事などを手配する葬儀社。
このふたつが弔うことを認め合い、新しい価値を生み出すことが私たちの使命です。

 

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文責:足立信行