葬儀(そうぎ)と葬式(そうしき)は違う?

葬儀(そうぎ)と葬式(そうしき)は違います

 

葬式と葬儀という言葉

 

私たちの国では、亡くなった方を見送る際には、葬儀、もしくは、葬式という言葉を使います。
この二つの言葉には明確な違いはなく、ご葬儀、お葬式と丁寧な「御」という冠詞をつける際に読み方が違うのみで、ほぼ同列に扱われています。
字引で調べますと以下の通りです。

 

葬儀(そうぎ)
葬式。人の死を悼み、死体を葬る儀式。宗教の発生と同時に行われたと考えられ、方法としては、土葬、火葬、林葬、鳥葬など、世界の多くの国々で旧石器時代から多様な方法で行われてきた。

 

葬式(そうしき)
→葬儀

 

両者の意味合いは同じであると書かれています。

 

けれども、言葉の慣例として、葬儀、葬式は使い分けられているように思います。
例えば、令和4年に行われました、「国葬」は正しくは「国葬儀」といいます。決してこれを「国葬式」とは言わない。
斎場などは「葬儀会館」と呼び、「葬式会館」とは言わない。
反対に、「葬式」が使われる言葉として、「葬式まんじゅう」とか「葬式仏教」などがあります。
また話し言葉などでは「お葬式どうする?」とか「お葬式どれくらいかかった?」などこう言ったくだけた場面では葬儀という言葉はあまり使われません。

 

つまり私たち日本人は、このような感覚で葬儀と葬式を分けて使っているようです。

 

葬儀→厳粛な、公式な、形を重んじる場合に使われる
葬式→カジュアルな、話し言葉として、会話やくだけたケースで使われる

 

ちなみに、葬儀社という言葉は、もともと葬儀屋という言葉がはじめにあり、葬儀、葬式、両方に読み取れる言葉と理解します。

 

葬儀式という言葉から類推すると

 

他のサイトをみてみますと葬儀と葬式は明確な違いを見つけることはできませんでした。

 

葬儀は逝去から火葬までの葬送儀礼
葬式は逝去から火葬までの儀式

 

と書かれてあり、「あれ?同じ?」と思いました。
けれども先述した通り、私たち日本人は長い葬送の歴史と文化の中でこの葬儀と葬式を明確にわけていたように感じます。
葬儀と葬式はもともとはひとつの言葉でした。
「葬儀式」という言葉がそれで、「葬」+「儀式」という言葉でした。
「葬」は「ほうむる」と読み、そのための「儀式」が「葬儀式」です。
つまり、亡骸(なきがら)を葬るための儀式が葬儀式でした。
やがてこれが前半の2文字の「葬儀」と後半の2文字の「葬式」に変わっていきました。
では、一体それぞれにどのような意味があるのでしょうか。

 

ちなみに「火葬式」というものは本来ありません。
>>>火葬式ってなんですか?

 

葬儀=宗教者、葬式=葬儀社

 

ここからは私の仮説です。
私は葬儀というものは宗教儀式の意味合いが強いように思います。
葬儀では故人様やご遺族の宗教というものをお伺いします。
キリスト教や仏教や神道など。
ごくまれに、無宗教葬という場合もありますが、「告別式」の部類に入ります。
その際には、宗教の後に「葬儀」という言葉を着けるのが慣例です。
キリスト教式葬儀、仏式葬儀、神式葬儀、などです。
つまり「葬儀」という言葉を使う際は宗教的な儀礼、宗教的な作法、宗教的な儀式を重んずるニュアンスが含めれています。
国葬儀も、最終的には無宗教葬になりましたが、内実を見ると、花の祭壇を設け、遺骨を安置し、黙とうを捧げていたため、間違いなく「無宗教」という「宗教」の名のもとで葬儀が行われていました。
葬儀会館も儀式を重んずる傾向がつよい。

 

>>>無宗教葬って?

 

翻って葬式はどうかと言えば、割と社会性を重んじる傾向が強いように思えます。
葬式まんじゅうは本来は財施にあると言われますが、儀式そのものというより社会性を帯びた布施というものです。
お葬式いくらくらい、という会話もくだけた形での会話であり、厳かさとはおよそ無縁です。

 

つまりこのように考えられるのではないでしょうか。

 

葬儀→儀式性を重んじる
葬式→社会性を重んじる

 

この二つは明確に断じられるわけではありません。
グラデーションのように、どちらの傾向が強いか、というものです。
役割的に言えば、このように考えられるのではないでしょうか。

 

葬儀→宗教者にウエイトがおかれた儀式
葬式→葬儀社にウエイトがおかれた儀式

 

ひとりの方を見送る際に必要なのはこの役割分担ではないでしょうか。
故人様を弔い、ご遺族に安心(あんじん)をお持ちいただくことも大切。
そして、社会的な立場を斟酌し、食事や返礼品などを手配することも大切。
宗教者と葬儀社が手を取り合い、共に見送ることが大切であると考えます。

 

お寺葬の意義

 

私たちは日本でただひとつの、お寺と葬儀社が共にひとりの命を弔う「お寺葬」の専門葬儀社です。
儀式の執行者としての僧侶。
食事などを手配する葬儀社。
このふたつが弔うことを認め合い、新しい価値を生み出すことが私たちの使命です。

 

お寺葬に関してはこちらから
>>>お寺葬についてみる

 

文責:足立信行